本質的な議論の先に 香西秀信『反論の技術――その意義と訓練方法』(明治図書)
最近、ちくま学芸文庫に香西秀信の『修辞的思考――論理でとらえきれぬもの』が入った。『修辞的思考』は明治図書で出版され、長らく品切れ・絶版となっていたもので、今回、版元を替えて刊行された形である。
『修辞的思考』はまだ購入すらしていないので、『反論の技術――その意義と訓練方法』(明治図書)を再読することにした。
本書は「Ⅰ 議論指導における反論の訓練の意義」「Ⅱ 教師のための「反論」自修法」「Ⅲ 反論の訓練」で構成され、反論の技術が議論の上でいかに重要であるかが主張される。
Ⅱでは教師に限らず使える自修の方法が示され、Ⅲでは学生の文章を示しながらの授業のような形になっている。ただ、Ⅰが理論編、ⅡとⅢは実践編と理解よりも、ⅡとⅢがⅠを中心に繰り返される全体の主張を補強する形になっているという理解の方が正しいように思われる。
本書のなかで著者は先人の主張を参照し、反論を「「主張」型反論」と「「論証」型反論」に分けている。その上で、初期の段階では「論証」型反論を訓練すべきという考えを示すのだが、著者自身も言うように、「論証」型反論をまずは訓練するというのは効率的である。
私はアカデミック・ライティングを初年次教育として担当するが、レポートを作成する際に自己の論証に対して反論を一旦置き、それに反論するような構成を指定している。その際「「主張」型反論」ではなく、「「論証」型反論」にするように伝えているのだが、「「主張」型反論」を置くと自分の主張と反論が平行線に陥ってしまい、議論の海に溺れてしまうことを思ってのことである。
本書は、そのタイトルからビジネス書のように思われるかもしれない。しかし、そこには一朝一夕で使えるようなテクニックは書かれていない。もっと本質的な議論の能力を身につけるため方法が示されている。だからこそ、自己の技術の向上のみを目指し、誰かを「論破」することを目指す人には向かないだろう。建設的な議論の先に分かり合うことを掴もうとする人に向いている本である。だからこそ、子どもたちを導く先生たちにはぜひ読んでほしい一冊である。